彼は間違いなく英雄だった

 

 ※ストーリーについては伏せていますが、若干のネタバレが含まれているかもしれません!作品を観る予定のある方はご遠慮ください。または見た後にどうぞ。

「ジョーカーという男は間違いなく英雄だった」

 

つい先程、今話題のJOKERを観て、あまりの衝撃と感動と謎の興奮に包まれ、「何かに書き残さねば!」と思い、帰宅→PC直行で書いています。

 

 

今、色々と話題のこの映画。常から気になる映画は予告も見ず、前知識ゼロで観ることにしているので、今回も例に倣って予備知識ナシで観にいきました。

 

 

マジで知識ゼロで大正解!!!

もし「冷やかしでこれ読んでみてから観に行こうかな〜」とか考えてるならいますぐブラウザを閉じなさい。

 

 

 

JOKERはBATMANに登場するヴィランの1人ですよね。私はBATMANのことをかじる程度にしか知らなかったので、原作のJOKERという人物についてはちょっと勉強してから行きました。

彼が『JOKER』になったのは、「元々頭が狂っていたから」とか「薬品に落ちて…」とか、明確ではないらしく、素性の知れない悪役が大好物な私はその文面だけで直感的に「好きだ」と思いました。

 

 

だから、今回の映画の素晴らしいところの一つは「世界線がはっきりしないこと」だと思いました。

JOKERの成り立ちは誰にもわからない。一説によると「狂ったせいで彼自身も記憶していない」んだとか。

そういった意味で、今回の映画のストーリーは「本当のJOKERの生い立ち」かも知れないし、「JOKERのでっち上げられた生い立ち」なのかも知れない。

(*コアなファンの方からしたらまた違うのかも知れません)

オタクなのでそういう考察を誘うようなストーリー構成・設定は大っっっっ好き。余裕があれば、BATMAN勉強してからもう一回観たいなぁ…。

 

 

 

 

この映画の世界線のJOKERは、本当に恵まれない。社会にはもちろん、周囲の人間にも恵まれない。主人公のアーサーがJOKERと化すまで、明確な救いは1つもない。

 

周囲からは見向きもされない。街角に転がるゴミと同じ。「目を向ければ存在する。だからといって何でもない」のがアーサーです。

 

だからってJOKERになっても報われない。スラムと化した街、で不満を抱え、爆発寸前の市民たちにとって彼は英雄だった。でも、彼がはじめに目指していた世界では、排除されるべき存在となってしまった。

 

「誰かにとってのヒーローになりたかったのか。それとも、誰でもよかったのか」

 

劇中でもJOKERが述べていますが、「喜劇は主観である」

ならば、「悪」も主観なのです。

腐った世界の住人たちにとって、その世界を大胆にぶち壊したJOKERは紛れもないヒーローであり、その世界を創った上流階級の人間たちは紛れもなくヴィランだった。その逆も然り。

もし、私が作中の上流階級にいたら?もちろん彼は「悪」なのです。

 

でも、現時点で彼には共感する部分がとてつもなく多かった。だから、今の私にとっては彼は「英雄」でした。他の人はどうなのかな。

 

「コメディアンとしてみんなを笑顔にしたい」と言っていたアーサーの言葉は絶対に嘘じゃなかったのに。彼の夢は心無い人たちによって潰されてしまった。

遣る瀬無い。

自分ならあんなに努力し続けられない、生真面目で心優しいが故に、誰よりも堕ちるスピードが早かったんだと思います。

彼の努力やカリスマ性を、もっと別の方法で発揮できたかも知れないのに。

無惨に摘み取られてしまったことが一番泣けた。

 

 

この映画はもちろんフィクションなんだけど、

「普通でなくては」「まともでなくては」っていうのは現代でもめちゃめちゃよく耳にするし、自分もふとした瞬間に「普通にしなくちゃ」と、しょっちゅう思います。

 

でも、それも全て主観!「まとも」か「おかしい」か。「良い」か「悪いか」なんて、あくまで自分自身の固定観念だし、社会の洗脳なのです。

「誰かがこうだから」って自分もそうしないといけないわけではない。

 

「社会のルール」っていうのは、マジョリティであり、力のない人間は、その多数決にすらも参加できない。

そして、そんな世界は、フィクションではない現実にも存在してる。

このことが映画の内容よりも一番怖い。

「そんな世界に生まれなくてよかった」と思ってしまう自分も怖い。

 

そういう意味でとても怖い映画でした。社会の深淵をチラリと除いた気がする。

そして、深淵もまた、私のことをチラリと覗き込んでいたのでしょう。

これからどんな風に自分は生きていきたいのか、見つめ直す良い機会になりました。

 

 

 

 

なお、以上の文章はすべて私の主観です。